上條 桂子

編集者、ライター。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科非常勤講師。

著書『玩具とデザイン』。編集を担当した本に『チオベン』(山本千織著)、『お直しとか カルストゥラ』(横尾香央留著)、『庭園美術館へようこそ』等がある。

最近聴いている阿部海太郎「Le plus beau du monde」

─20歳の頃、どんな音楽を聴いていらっしゃいましたか?

上條:マイ・ミュージック・ヒストリーを考えてみました。(自身の音楽史メモを共有する)

─ありがとうございます。

上條:聴く音楽というのはずっと連なっているので、20歳 ズバリこれだ!というのは分からないんですが、高校の時はフリッパーズギターの二人がそれぞれ独立したあとの音楽を聴いていました。音楽はルーツを追いながら聴くことがよくあります。自分がブラスバンドでサックスをやっていたので、東京スカパラダイスオーケストラとかが好きでしたね。彼らが好きな曲は?と調べてジャズを聴いたり。そのうちクラブジャズを聴くようになったり、どんどん枝葉が分かれていくような感じでした。大学生になるとかなりジャンルが広がって、メモに「映画×音楽」って書いたけど、映像で知って音楽を聴いていたかな。20歳くらいだと、PVにハマっていた時かもしれません。PVの監督たちが撮った映画も、面白いなと思って観ていましたね。20歳くらいだと、特に映像で聴いていたのはビョークかもしれない。

─ビョークはサイケデリックな映像が多いですよね。

上條:そうそう、映像技術を使いまくって新しい表現をやっていたのが面白かった。ビョークが主演を務める『ダンサー・イン・ザ・ダーク』っていう映画とか。時代背景で言うと、当時ミニシアターにもよく行っていました。映画を観て、バンドの名前を知って、アルバムを買って、ということもしていましたね。

─なるほど。例えば、高校生の頃聴いていた音楽をそのまま大学生でも継続して聴いているということですよね。

上條:そうです。層になっている感じで、もちろん思い出して聴いているし。だからこそ「20歳のとき聴いていた1曲」と言われると悩むんですよね。うーん......。オザケン(小沢健二)もいるしなあ。

─実は、他の教員にもインタビューをする中で、各世代でオザケンの名前が上がっているんですよね。社会的に大ブームだったんだなと思います。

上條:社会的に大ブームというと『今夜はブギー・バック』とか、アルバムで言うと「LIFE」だよね。でもオザケンは私は1枚目の方が好きですね。1993年、高校1年の時にオザケンが「犬は吠えるがキャラバンは進む」というアルバムを出して。めっちゃハマって、最初に全部の曲を聴くのがもったいなさすぎて、1曲を1週間ひたすら聴くみたいな聞き方をしていました。大学生くらいになるともっと網羅的に聴くことができたけど、1曲に対する集中力は高校生の時の方が研ぎ澄まされていた気がする。だから、本当死ぬほど聴いたという意味ではそのアルバムの4曲目『地上の夜』かな。今聴いてもカッコいいなあ。細かいことを言うと、フリッパーズの頃は一人称が「僕」だったのがこのアルバムで「俺」になったんですよね。それが衝撃的でした。オザケンの好きなところは、歌詞に漂う無常観で。このアルバムも「社会はどんどん変化していくけれど自分の人生は続いていくよ」というような意味だったんじゃないかなと思います。

 

─吹奏楽をやっていたということですが、今でも聴いている印象深い曲はありますか?

上條:今でも当時の曲を聴いているというのは無いんですが、高校の時はマーチングをやっていたのでビヨンセの「HOMECOMING」というドキュメンタリー映像では胸が熱くなりました。オープニングでマーチングバンドが出てくるんだけど、元々軍隊から始まったマーチングの歴史も併せてどのようにショーを作っていくのかっていう。吹奏楽魂みたいなのが掻き立てられてめっちゃ泣きました(笑)。おすすめなのでぜひ。でも、やっぱり最近はこうやってYouTubeで音楽を聴くというのも主流になってきましたよね。

─実際に私もYouTubeでPVと一緒に聴くことが多いですね。最近だとBLACKPINKとか。

上條:大好き♡。私も正月明けたくらいからBTSにハマりました。よく考えられた複雑な音楽とか、アイドルとしての完成度とか、社会的な姿勢だったりを含めて好きです。癒されます。

 

─現在はどのような音楽を聴いていますか?

上條:阿部海太郎の曲はいいですよ。クラシックベースの方なんだけど、元々知ったきっかけになったのは資生堂ギャラリーで開催された「夢の饗宴:歴史を彩るメニュー×現代のアーティストたち」という展覧会でした。

 彼の音楽を聴いていると「どんな時代で、どこにいるのか」を揺るがされる感覚があって、時空を超えた不思議な世界に連れていってくれる没入感があるんですよね。最近の曲で特に一曲あげるなら、「Le plus beau  livre du monde」から『Octobre -La chanson de l'épouvantail 十月 かかしの唄』ですかね。

 

─武蔵美生に是非聴いてほしい音楽はありますか?

上條:juana molina。彼女の映像センスが大好きで、『Eras』は好きで何度も聴いてました。でもPVで言うなら、『Cosoco』が面白い。何で知ったのかも忘れてしまったけれど、一度聴いたら忘れられない声とヘンテコで複雑なサウンドにすぐハマってしまいました。この人はコメディ女優としても活躍していて。笑いという要素が入っているのも好きな理由だと思います。

 

取材:2021年1月6

編集:木島

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